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カイゴの学校

介護について、現場での体験を交えながら、分かりやすく。

元介護職員が「川崎の有料老人ホーム連続転落死」について思うこと【7コマ目】

おはようございます。今日は1日天気も悪いようですね。

カラダが少し冷えているので、ブラックコーヒーを飲みながら書いてみます。

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 いつもは、ある程度の構想を練っておいたものを朝まとめる、といったスタイルでブログを投稿しているのですが、今日は、ゼロから調べ、書いていきたいと思います。朝から、暗いニュースを調べるのも正直シンドイですが、いつか向き合わなければと思っていたので、本日、トライしてみようと思います。

 

川崎・老人ホーム連続転落死について

お年寄りが相次いで転落死したのは、二〇一四年十一月三日~十二月三十一日にかけて。岩本社長は、一件目の転落死を事故と認識し、二件目も「事件とは想像できなかった」。三件目が起きた後の一五年一月、サポートシステムは今井隼人容疑者=殺人容疑で逮捕=ら職員に運営会社として聞き取りをしたが、説明に違和感は感じられず「性善説で職員を見ていた」と岩本社長。今井容疑者は一件目と三件目の第一発見者。そんな不自然な点があったのに、深く追及しなかった。その後、相次ぐ転落死に職員から「気持ち悪い」などと不安の声が上がり、取りあえず、施設内の不安感を解消するため同月、今井容疑者を当直から外した。岩本社長は「運営を施設にまかせることが多く、本社の関与が少なかった。甘く見た」と悔やんだ。

東京新聞:川崎・老人ホーム連続転落死 警察・運営側「事件」見抜けず後手:社会(TOKYO Web)

 

普通は、このような大きな事件や事故でなくとも、必ず「事故報告書」を記載し、それを上長もしくは管理者に提出します。提出前、もしくは提出後に、ユニットの職員あるいは、施設職員全員を集めたミーティングが開かれ、事故はなぜ起こったかを検証します。そして、どこを改善していくのか、具体的な行動に落とし込めるよう考え、共有します。この施設は、そのようなことをキチンと行ったのでしょうか。もしくは、あまりにも人員不足が深刻であり、そのような時間が持てなかったのでしょうか。どちらにしても大きな問題です。

 

運営元 : 株式会社メッセージについて

https://valuationmatrix.com/api/chart?tickers=2400&w=500&h=500&y=%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E9%AB%98%E5%90%88%E8%A8%88&yunit=%E7%99%BE%E4%B8%87%E5%86%86&ytype=bar&y2=%E5%96%B6%E6%A5%AD%E5%88%A9%E7%9B%8A&y2unit=%E7%99%BE%E4%B8%87%E5%86%86&term=20

以下、財務分析サイトより、株式会社メッセージに関するコメントを引用します。

「無形固定資産」の割合が多い企業です。IT・ソフトウェアへの投資に活発な企業や、M&A事業を拡大している企業に多くこの傾向が見られます。

 

介護系企業としては、日々の記録をパソコン入力にし、作業効率を図っていた、という努力はしていたかも知れません。逆に、人員不足は必然であるというスタンスから、IT面への投資を強化することで対応した、という見方もできます。

 

 少し話はそれますが、介護系企業のアナログさに、他業界から入って来られた方は驚きを隠せません。例えば、日々の利用者の様子を書いた「申し送りノート」。未だに、ノートに鉛筆やペンで書き込む、それを共有するスタイルをとっている所は多いです。

 私がユニットリーダーであった頃、他のメンバーの同意を得て、全てエクセルへの打ち込みへと換えました。「大切な情報が詰まったノートが1冊しかなく、誰でも見れる状態になっている。万が一なくなった場合どうするのか」リスクをヘッジする必要性を説き、1年の移行期間を経て、すべてEXCELへの入力へと変更となりました。

 

すいません、話を戻します。

 

積極的な投資は控えており、成長は一段落したようです。

 

レポートではオブラートにそう書いていますが、正直、人員に限界があったものと思われます。施設では、立ち上げから半年〜1年すると施設長が代わってしまうことがよく見られます。新たにできた施設へと赴き、そこでベースを作ったら、また次への繰り返しです。そういった“企業的に使える人材”の確保が、追いつかなかったのでしょう。

 

有料老人ホーム『Sアミーユ川崎幸町』の職場環境について

川崎幸町とは別の『Sアミーユ』で以前働いていた女性介護士が証言する。「スタッフが人手不足というのは日常茶飯事。常に募集は出していました。手が回らず、入居者を放置することもしばしば。結果として部屋に閉じこもりがちに……。夜勤では47人を2人でみるんです」

川崎の老人ホーム転落死、元職員が実態を激白 別施設で「性的虐待も」 - ライブドアニュース

 

この証言は、事件の起きた施設ではないのですが、同じSアミーユ系列として、たいへん参考になるものだと思います。例えば、グループホームですと、1ユニット9名の利用者を1名の職員が夜勤対応します。また、特別養護老人ホームですと倍になり、2ユニット20名ほどを1名の職員で夜勤対応します。グループホーム認知症の方のみで構成されていますので、その分、人数は特養よりも手厚くなっているんですね。

 

 2時間に1回ほどオムツ交換や朝食の準備、排泄介助など、本当に細かく時間を組み立てないと、夜勤を乗り切ることは難しく、まして階違いの47名を2名の職員で対応することは、どんなに仕事のデキる人でも無理ですし、かなりの確率で事故が予測されますので、逆に絶対にしてはいけないレベルです。

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介護職員の給与について

メッセージの営業利益率は9.3%で、ライバル他社を上回る。それは介護職員の給与が業界平均より低く抑えられていることによる。

(3ページ目)転落死続出の「虐待」老人ホームのトンデモ実態!職員の年収3百万円台、高い離職率… | ビジネスジャーナル

  施設という箱の大きさが決まっている、ということは、入居者数に上限がある訳で、そこで利益を出すとすれば、経費を削るしかなく、それはほぼイコール、人件費を削るということになってしまいます。そこまでは、どの施設も同じでしょうが、その人件費の削り方が他社よりも凄かったのでしょう。

 

メッセージのSアミーユ川崎幸町は頭金なしで、食費や光熱費を含めた月額22万円という超安値で入居者を集めていた。頭金なしなら月額30万円、月額22万円なら頭金は500万円以上必要になるのが、業界の常識となっている。低価格を売りに入居者を集めるが、低賃金などを理由に離職率も高い

(3ページ目)転落死続出の「虐待」老人ホームのトンデモ実態!職員の年収3百万円台、高い離職率… | ビジネスジャーナル

 

 離職率、という言葉が書かれていますが、仮に新しい施設が職員を募集しオープンしたとして、どれくらいが1年後もいると思いますか?これは、私だけではなく、他の介護関係者との話し合いでも合致したのですが、パートと正職員を含めて、50%は、1年以内にいなくなります。3年も経つと、オープニングにいたスタッフが丸々入れ替わるということもザラです。

 

 経験者は、それを理解していますので、例えばオープニングの際、初めて介護の仕事をされ、ウキウキな雰囲気で「頑張っていこうねー!」という方々を見て、冷静に、「この中から、半年後も残るのは誰何だろう」と思ったりもします。

 

 経験者がそう思う、ということは、言わずもがな、施設の管理者、企業サイドも当然それを意識しており、年間の予算管理の中に、定期的な求人費は、もちろん折り込み済みです。悪意を込めて書くとすれば、「お前らが、だいたいどの時期に、どれくらい辞めるかは分かっている。辞めたら、すぐ次の人員を確保すればいいだけ」と、超短期的な視点で考えている場合も多く、教育の意識は低いのが現状だと思われます。

 

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元職員の今井隼人容疑者について

今井容疑者は「高齢者をベランダから投げ落とし転落死させた」と供述している。飯山氏は過酷な労働環境に“耐えかねて”認知症高齢者を虐待したと話したが、その労働環境が殺害の動機になったとすれば、常軌を逸している。労働のストレスや施設への不満だけでは、殺人という一線は越えられないはずだ。そこには、なにか別の背景があったのではないか。

川崎の老人ホーム転落死 容疑者は「死の予言」を的中させていた? - ライブドアニュース

 

遠回しな表現ですが、この事件が起こった背景を、今井隼人容疑者個人に負わせようとしているような気がしてなりません。「状況」と「個人」が深く絡み合って、「行動」が起こるものだとするならば、今井容疑者の未熟な精神状態よりも、「状況」にフォーカスすることを優先させるべきです。再発を防ぐためには、「状況」の改善が急務です。

 

過酷な労働環境に“耐えかねて”認知症高齢者を虐待」といった箇所ですが、この過酷な環境は、正直、体験したことがないと決して共感できないレベルかと思います。

 

例えば、深夜のナースコールの呼び出し。部屋を訪れ、要望に答えたとしても、1分ごとに再度ナースコール。「朝食はまだなの?」と、ナースコールに起床した、もう1人の利用者。さらにトイレの最中だった利用者から「今日はもう帰ります」宣言。ゴン、と聞こえて駆けつけてみると、室内での転倒。原因は居室での排便に、足をすべらせた模様。未だ鳴り続けるナースコール。「帰ります」との入口のドアを叩く音。まだスタートできていない朝食の準備。排便のための居室の清掃 etc 

 

もちろん、ある程度の深夜の利用者さんの行動はパターン化されるため、先読みすることは可能ですが、入職すぐや、オープニングから間もない頃は、予測不能な日が続きます。今井容疑者は、先読みして考えることで改善が図れないほどの環境にいたのでしょう。

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最後に一言

同じような事件は今後も起こる

大変ネガティブな予測なのですが、このような事件は、まだまだ起こると思われます。一番の理由としては、企業の顧客である、「高齢者層は、今後も増え続けるから」です。

 

また少し脱線するのですが、重要なことなので。

 

私が以前、リクルートの方と話した時のことです。

「なんで、介護業界のデザインって、あんなにダサいんですかね??」「それは簡単なことだよ。競合がいないから、だよ。競合がいないから、差別化する必要がない。だから、デザインはダサくて良いんだよ。」

なるほど、と私は納得しました。

 

この会話はデザイン論の内容でしたが、こうも書き換えることができます。

「高齢者はいまだ増加中であり、競合がいないから、差別化する必要がない。だから、どこも時給はだいたいどの施設でも同じで、ほぼ変わらない。一見すると職員不足のように見えるけど、それでも、最低限の人は集まっている。また、最低限の人を集める仕組みもある。そうであれば、やはり、時給も変える必要もない」

 

「キツくなったら、辞めて、次の施設にうつれば良い」

そう思えるのは、介護職としてある程度のキャリアをすでに積んでおり、経済的にも少なからず余裕のある一部の人たちだと思います。今事件の今井容疑者のように、キャリアも浅く、低賃金で働かされている場合は、そうもいかないでしょう。

 

 低賃金が故に、やめた後の生活資金を考えねばならず、そのタイミングを待つ間に、更なるストレスで押し潰されてしまうといった、悪循環のループ。

 

介護職に若い人も多くなってきた時代。きっと近いうち、このような事件は繰り返されます。長くなったので、解決策としての提案は、次回以降とさせて下さい。

 

Tomorrow never comes !     see,you!
(明日は必ずやってくるとは限らない→今日できることは、今日せよ!)